電気圧力鍋で豚もも肉ブロックを真空低温調理
2021/03/24
近所のスーパーをふらついていたら、豚もも肉のブロックが異常な値段で販売されていた。いくら豚もも肉といえ、グラム50円そこらはすごいことなので、とりあえず手にとって鍋でどうにかすることにした。
アイリスオーヤマの電気圧力鍋は真空低温調理ができる。温度設定が5℃単位なので、ANOVAなどと比べるとやや機能は限定的であるけれども、最低限の役割は果たしてくれそうだ。あまり低温調理への知見がなく、高い肉でどうこうするよりも安い肉で実験したかったのも好都合だった。
大きく2つのブロックにして、一方を醤油、生姜、みりん、酒、ネギベースのチャーシューに、他方をオリーブオイルとニンニク、塩ベースのローストポーク(の下地)にすることにした。また対照実験ぽくするために、同じ味の中の片方のブロックは紐で縛り、もう片方は肉塊そのままで投入した。
特に豚肉の低温調理は、主に2点を視野に入れながら行う。ひとつはウイルスや食中毒菌の除去、もうひとつはタンパク質の変性が該当する。
前者について、このあたりは適当なブログを見ていると痛い目にあうので、厚生労働省のサイトや適切な書籍(『Cooking for Geeks 第2版――料理の科学と実践レシピ』など)を参照する必要がある。基本的には、肉の中心部が63℃で30分以上と同等の熱を加える必要がある。このあたりは、Z値やD値などの知識が必要になるが、まあ各自調べて欲しい。ちなみに、低温調理後に肉の表面を炙るなどすれば安全という言説もあるが、これは正しくない。豚肉は、肉の内部にE型肝炎ウイルスが付着していることがある。
後者について、肉や魚に含まれるタンパク質は主にミオシンとアクチンで構成され、それぞれで変性する温度が異なる(ミオシンの方がアクチンより低温で変性する、魚と肉で変性の温度が異なる)。人間の舌は、ミオシンが変性しつつ、アクチンが変性していない状態の肉を美味いと感じるので、そうした温度帯をターゲットとする必要がある。
ベラベラと言ってきたが、肉について要は、55〜65.5℃の間で、菌が死ぬ時間以上調理すればいい。まあわざわざ低温調理をしようとする人がギリギリのスケジュールで調理するわけもないので、とにかく長い時間やるといい。注意点としては、冷蔵庫から出した直後の肉は冷え切っているので、またデカすぎる肉は厚さゆえに、肉中心部の温度が上がりきらない可能性があるので、このあたりは適宜調整する。
自分は60℃で12時間くらいやった。
紐はつけてもつけなくても変わらなかった。よく考えれば、全体に満遍なく加熱されるので、そりゃそう。
豚もも肉は脂質が少ないので、肩ロースなどに比べると感動的な旨さはないが、しっとりとする。チャーシューは薬味と卵黄と一緒に白米に乗せて食べたら上品な感じになった。
一方、オリーブオイルの方は塩味が強すぎて失敗した。名前は忘れたが、塩に対してオイルで膜を張ると、より内部に浸透しやすくなるみたいな現象があった気がする。塩を入れる場合は、やや少なくするか、保存食を作るくらいの覚悟でやる必要がある。自分はパンチェッタぽくして、パスタにして処理した。
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電気圧力鍋での低温調理がそれなりに形になることがわかった。失敗からの知見もあり、次回以降に活かせそう。次は異常な安さの肉ではなく、それなりの肉を使ってやってみたい。