スマートウォッチに関する覚え書き
2023/09/03
スマートウォッチをそろそろ買い換えようと思案していたら、嫌なことを思い出した。
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母親の容体が悪くなった際、スマートウォッチを着けさせた。自分のスマホと同期させ、なんらか変化があった際に気づき、諸連携できるよう臨んでいた。
しかし、スマートウォッチは異常検知することなく、母は鬼籍に入る。
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その日は夜中3時まで論文を書いていた。その後、朝7時に心臓が動いていないとの電話を受けるまで就寝していた。
さらに、看護師が最終巡回したのが夜中の4時頃らしく、その時は生きていた。で、次の巡回時には死んでいた。
すなわち、私の就寝時間にちょうど重複するように、母は往生したのだ。死因は衰弱ではなく、血栓症だった。
病院に到着し、白い腕を見てみると、時計は装着されていなかった。単純に治療の妨げになるために外してあったのか、着ける元気もなかったのかは、わからなかった。
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ここまでが事実で、あとは解釈となる。
もし、着けていたら異常を検知し、通知が来て、適切に処置できたのだろうか。Apple Watchは血栓症の兆候を見つけた実績が何度かあるらしい。報せが届く可能性はなくはない。
しかし、その時間自分は疲れ果てて寝ており、実際に気が付いたかは定かではない。もし、スマートウォッチを装着していた場合、手元のアプリには、灯火が消えるまでのバイタルと、何らかの報せが記録されていたはずだ。それに気づかず眠りこけていたら、絶対に消せない生々しいデータを見てしまっていたら、どんな風になっただろうか。
かと言って、望みが少しでもあるなら、着けていなくて良かったとは到底ならない。
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これに気づいたのは、母が死んですぐの夜だった。魂がまだ準備できていなかった。口の中が酸っぱくなる気がしたので、蓋をした。
これに結論はなく、ただ封をしていた出来事を振り返るのみだ。私たちは今に崩れ落ちそうなバランスの中に、気が付くと立ちすくんでいる。