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無口な人には2種類いる

2021/02/08

なんとなく『神のみぞ知るセカイ』を読み返している。この作品は実はマンガ作品の中で一番好きなもので、割と人格形成に大きな影響を与えている。ヒロインの攻略や下着描写などにやや時代感はあるものの、いま読み返してもプロットが素晴らしい。一番好きな話は6巻の生駒みなみ回。

その中に、自分がこの作品を買い揃える理由となった表現を認め、記録がてら書いている。それは2巻の奥付、ヒロインのひとり「汐宮栞」の人物紹介にある。

無口な人には2種類いて、本当に無口な人と、本当は話したいんだけど話せない人といると思うんですよ。

……

会話のなかには入ってこないんだけど、話にあわせて小さくリアクションをとっていたり、小声で何かツッコミを入れていたり、無言で人の顔をじっと覗き込んだり

……

こういう人たちはむしろ言葉を重じてると思うんですよ。

……

そして、こういう人の方が、話は面白かったりする。このような、物言わぬ雄弁家を応援する話として、このお話を描いたつもりです。

『神のみぞ知るセカイ(2)』189

無口や朴訥といった形容詞で語られがちな人も、その裏側は観察困難であることが多い。こうした単純な指摘はハッとするものがあり、確かに自分の周囲にもそういう人がいるなと、中学生のときに感得した覚えがある。伊集院光のラジオ番組『深夜の馬鹿力』でも、似たような話を聞いた気がする。

自分は作品のなかに垣間見える作者の思慮深い観察が好きで、小さく書かれている設定秘話や、作者ブログに書かれている裏話をよく読んでいる。迂遠な説明であるが、作者の若木民喜先生は京都大学の哲学系出身で、全巻を通じて読むと、人間の苦悩や、理想と完全に対する冷静な眼差しがよくわかる。

他にも、『バーナード嬢曰く。』の幕間の作品紹介に、作者の思想が見られて面白い。作品ではなく、作者の思想が面白いランキングみたいなのがあったら読んでみたい。自分だったら上記に加えて『さよなら絶望先生』を推す。

khosoda